十日町市は全国でも先駆けて協力隊制度を導入した先進地。地域の補助人として最長3年間仕事することができる。その間に「住み続けるための仕事をつくる・みつける」ことが地域おこし協力隊の移住のカタチになっている。

佐藤あゆ  1989年9月28日 30歳 新潟市 
新潟市出身。立教大学観光学部に進学し、国際協力を学びラオスに留学。卒業後は大手旅行会社に就職。4年間の提案営業業務を経て、社員20名のベンチャー企業に転職。転職先の上場を節目に経験とキャリアを活かし十日町市に移住。

実践者になりたい

地域おこし協力隊には着任地域の要望に合わせて活動をする地域密着型と事前に与えられた課題に対して活動をするミッション型の二つに大別される。佐藤さんは「観光」の専門人材として着任したミッション型地域おこし協力隊だ。

「大地の芸術祭をきっかけに二〇一七年くらいから、十日町と緩く関わる期間が3年くらい、東京で働きながら、こへび隊(大地の芸術祭サポーター)や市内の旅行会社の立ち上げに副業で関わっていました。東京の生活に不満はなく、仕事も楽しくて、それらを辞めてまで移住しようと思ってなかったんです。」

 
十日町の顔見知りが少しずつ増えてきた頃、首都圏の企業が主催する越後妻有を舞台にしたスタディツアーに参加。多様な経験やスキルを持った都市圏の社会人が地域に入り込み、半年間かけて学びながら、地域課題に対して解決策を提案するプログラムだ。

「今まで部分的に関わっているだけでしたけど、この時に初めて地域を深掘りして『ただ好きなだけでなく、もっと地域のことを知って自分の言葉で話せるようになりたい、外からではなく地域の一員として関われることを見つけたい』って思うようになって、そこから、移住を考え始めました。でも、地域おこし協力隊は何か違うとも思っていて、関わり方を考えてたんです。」

転職や二拠点居住で十日町に関わり続けることも検討していたが、今の自分が本当に地域の役に立てるか自信が持てなかった。

三足のわらじ生活開始。

「最後に背中を押してくれたのは、旅行会社を立ち上げた協力隊の先輩と地域の方々でした。市役所も仕事内容や働き方を柔軟に設計して受け入れてくれたので、転職・移住することが出来ました。」

佐藤さんの働き方は、市内で活動する地域密着型の協力隊とは大きく違う。週3日は市役所の芸術祭企画係で地元サポーター支援や観光資源活用の仕事をし、週2日は旅行会社に出社してツアーの企画営業や古民家宿の運営管理を行う。空いた時間はオンラインで芸術関連の大学院に通学し修士取得を目指す。一般的になってきたパラレルキャリア、複業、リカレント教育など、移住をしてからも情報収集やキャリアアップの手段を持てるように心がけた。

「移住してから変わったのは、日常の中に非日常があるというか。今まで非日常の自然や芸術を求めて十日町に来ていたけど、それらが仕事や生活と一体にある感じ。支出が減って、可処分所得が増えて、余裕の出来た時間を別のことに使えるようになりましたね。」

 ゆっくりと田舎暮らしも楽しみながら、協力隊を「自分のキャリアの最先端」と捉え仕事に取り組む佐藤さん。公共と民間の視点を横断しながら、新しい価値を生み出そうと奮闘している。