人生の一場面を写しとる地域に密着した新聞社の仕事

新聞記事を書くことは難しい仕事ではない

「郷土の歴史を刻み、地域の明日を拓く」を掲げて令和3年5月に創業120周年を迎えた十日町新聞社。

中心市街地から少し離れ、程近い十日町市立南中学校のグラウンドから子ども達の声が聞こえてきそうな立地にある社屋の中には、自社で発行していた名残の印刷機と積まれた新聞紙が置かれています。
　

「レトロな雰囲気がありますよね」と案内をしてくれたのは、2018年の末頃に入社した記者の金澤さん。未経験から地域紙の世界に飛び込んだ金澤さんは都内で会社員をしていたUターン者です。

「元々、文章を書くのは好きでした。新聞社と聞くと『堅そう』とか『難しそう』と感じるかもしれませんが、『書き方のパターン』はあるので、それを掴めれば新聞記事を書くこと自体はそこまで難しい仕事ではないですよ」

記事を書くのは仕事のほんの一部分。新聞社の仕事は情報収集から始まり、取材の企画・広告営業、地域紙だからこそ地域に密着して、様々な関係性を構築するのが大切だといいます。
　
「大手の新聞社だと番記者や専門記者など、一つの分野に特化して仕事をするかと思いますが、十日町新聞社は地域紙の中でも十日町市と津南町のあらゆる情報をキャッチしています。仕事の面白さは『退屈しない』ということでしょうか。新聞に載る方っていうのはいろんな方面で頑張っている方、私としても刺激をもらっています」

地域のニュースがあれば出向き、事件があればいち早く記事にする。そういう部分は新聞社らしいですが、大手の新聞社と比べた時に地方紙・地域密着紙ならではの仕事もあるそうです。

「私たちの仕事は、誰かの人生の一部分を切り取る仕事です。毎年開催されるような表彰式の様な場であっても、その人にとっては一度きりの舞台。それを忘れずに仕事をしています」

地域に密着した新聞社だからこそ

地域に密着した情報を取り扱う十日町新聞社。
記事にする情報にも地域性が出るのだといいます。　

「ある日、新聞社に電話がかかってきたんです。高齢の方だったのですが、その方はご家族に先立たれて、一人暮らしでした。鬱々と暮らしていたけど、周りの方々にたくさん助けてもらって元気がでた。その感謝を紙面で伝えたいということでした」

電話越しからでも伝わってくる、その切実な想いに金澤さんは、ある提案をしたのだそうです。
　
「私がお話を聞いて記事にします。そう提案しました。お宅に伺って話を聞き、『読者の声』として掲載しました。誰かに伝えたいことのある人が新聞を介して、それを伝えようとしている。これは地域に密着した新聞社だからこそ、出来ることではないかと思いました」

大手の新聞社では対応が難しいかもしれない、そんな話も伝えることができる。金澤さんは仕事のやり甲斐を見出したのだといいます。

「最近は、ネガティブなニュースや誰かが失敗したニュースがよく見られる時代になってます。でも、地方紙って明るいニュースを取り上げることの方が多いんです。もちろん事件や不正のニュースがあれば取り上げますが、基本的には地域にとっていいニュースを届けることができる。活躍する地元出身者が出場する大会があれば、県外まで出張して取材にいきますし、明るいニュースを追いかけて、伝えることが出来るのが仕事の楽しさだと思います」

新聞記者という肩書きがあれば、地域のどんなところでも邪険にはされないでしょう。地域を知り、伝えることが出来る仕事として「地域密着の新聞記者」は未経験からであっても、門戸は開かれているようです。

地域の歴史を積み重ね、残していく新聞社の仕事。
次のバトンを繋ぐのは、あなたかもしれません。